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Another Talk「美味しい旅本」アナザートーク

『美味しい旅本1』~美味しい余話 Ep.2~
『美味しい旅本』シリーズ3冊目の発行にあたって、これまでのご登場いただいた皆さんの対談から、紙幅の都合でカットせざるをえなかったお話の一部を公開!対談の収録内容の文字起こしから、その語り口などもほぼそのままにお伝えします。

エルサンワイナリー松ヶ岡 ジェネラルマネージャー 川島旭さん
(インタビュー日:2022年12月20日/対談のお相手:西さん)

――庄内でのワイン造り
僕は群馬県の高崎出身で、もともとはワインのバイヤーで世界各国を回っていたんですけど、世界のワインって、カベルネとかシラーとかメルローとかの7品種で世界の25%なんですよ。残りの75%は在来品種なんです。世界の75%はそういう土着のブドウを使って造ってるってことが最大の魅力なんですよ。鶴岡には250年くらい前から栽培されてきた甲州ぶどうがあるし、それでワインをつくったら世界に通用するワインができるんじゃないかなって。庄内に来て感じたのは、いいものはあっても伝えるのが苦手なのかなという印象で、せっかくのポテンシャルを僕のような外からの目線で発信したらいいかなって思っていたんです。

※「鶴岡甲州2020」は「Japan Women’s Wine Awards 2022」の最高賞「ダブルゴールド賞」、世界で最も影響力のあるコンペティションであるインターナショナルワインチャレンジ「IWC 2022」で「COMMENDED大会推奨酒」を受賞

ワインの重要なところって酸が残るか残らないかなので、庄内はある程度の寒暖の差があるから、酸が残るんですよ。寒暖差がないと酸が抜けて糖が上がっていっちゃう。カリフォルニア州モントレーのサリナスバレーってところは朝晩と霧が発生するんです。その霧がブドウを冷ましてくれるので案外いいブドウがとれるんですよ。モントレーに買い付けに行くと、海の色も日本海に似ていて。それを見た時に、庄内でもいけるかなって思ったんですよね。鶴岡市がオリンピックの時に誘致したモルドバには、世界最古といわれているワイナリーがあるんですけど、あそこは寒いエリアでしょ。何℃までブドウの苗は大丈夫なのか聞いたら、マイナス50℃までは耐えられるって。だから寒さはそんなに問題はないなって。

僕はワインの買い付けとかアッサンブラージュに関しては専門家ですけど、醸造は初めてだったし、ブドウづくりも最初は全然分からなかったんです。「1976パリスの審判」って、カリフォルニアワインがフランスワインに勝った出来事があったんですけど、その時に頑張ったのが University of California, Davis(カリフォルニア大学デイビス校)でブドウの研究をたくさんしていたんですよ。その歴史的な出来事にヒントをもらって、近代的なワインづくりと、もともとある土地のテロワールを融合させたら、世界に通用するワインができるんじゃないかって、山形大学と土壌の研究をして、慶應大学とぶどうのメタボローム解析をしたんです。それで3年ぐらい研究をして、世界に打って出たいなと思ったので、グラヴィティフローっていう最新の考え方でワイン造りを始めたんです。

――地域とのマリアージュ
川島 ワインって「つなげる」とか「補う」とか、そういう位置づけなんですよ。庄内産の食といかに合わせるかっていう部分があるので、鶴岡甲州は酸をたくさん残して日本海の白身と合わせましょうとか。豚肉と合わせるために樽の中に寝かせる期間をゆっくりしたメルローを出そうとか。食材と合わせてワインが勝ってはいけない。日本のワインは濃縮感がないから、それをプラスとして、日本人の一歩引いて主張しすぎないワインで料理とつなげる、つながる、補う。それを表現できる日本ワインをつくればいいし、世界の最高のものも知ってるし、最低のものも分かってるから、ここのワインの立ち位置を考えながら。

――海外と庄内のガストロノミーツアー
川島 フランスのワイン街道の中でもブルゴーニュのディジョンからボーヌ、そこはもともとカトリックの巡礼街道だったのかな。そこを周る旅があって、スペインのカリフォルニア・ミッションを巡る旅も教会を行くんだけど、もともとワインってキリストの血といわれて、聖なる飲み物としてヨーロッパに広がった。キリスト教とワインは切っても切れない、宗教的、精神的と密接なつながりがある。海外のガストロノミーツアーはただおいしいものを食べるんじゃなくて、そういうルーツを訪ねるような旅が多いなって。庄内でも食と精神文化やルーツを探る旅が理にかなってる気がする。いいですよね、庄内のにおいがあってね。

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